クロス張替えのDIYを成功させるための秘訣は、貼り付けの技術そのものよりも、実は地味で根気のいる「下地処理」にこそ隠されています。我々プロの現場では、仕上がりの美しさの八割から九割は下地で決まると考えています。どれほど高価で美しいデザインの壁紙を選んだとしても、それを貼る土台となる壁面に凹凸や歪みがあれば、乾燥した後にそれが影となって浮き出てしまい、残念な結果を招くからです。まず古い壁紙を剥がす際は、下地の石膏ボードを傷つけないよう慎重に行い、薄い裏紙を均一に残すように心がけてください。剥がれかけている裏紙や、以前の糊が固まってコブになっている箇所があれば、サンダーやスクレイパーで丁寧に取り除きます。最も重要な工程は、パテ付けです。石膏ボードの継ぎ目やネジの頭、あるいは古い壁紙を剥がした際に生じた段差を埋めるために、パテを薄く、広く塗り広げていきます。初心者が陥りやすいミスは、一度に厚く塗って段差を解消しようとすることですが、これでは乾燥時に肉痩せが起きたり、表面がひび割れたりする原因となります。パテを塗っては乾燥させ、目の細かいサンドペーパーで平滑に削り、必要であれば再びパテを盛るという作業を二回から三回繰り返すことが、鏡のような滑らかな面を作るための最短距離です。特に光が斜めから差し込む壁面や、光沢のある薄手の壁紙を選ぶ場合は、下地の粗が目立ちやすいため、より徹底した研磨が求められます。また、下地が合板や古くなった砂壁などの場合は、直接壁紙を貼っても糊が染み込んでしまったり、アクが出てきて新しい壁紙を変色させたりすることがあります。このような場合は、必ずシーラーと呼ばれる下地調整剤を塗布して表面を固め、接着力を高める処置を施してください。下地処理を完璧に終えた壁は、指でなぞったときに何の引っ掛かりも感じないほど滑らかになります。この状態まで整えれば、あとの貼り付け作業は面白いほどスムーズに進み、仕上がりはプロと見紛うばかりのクオリティに到達します。面倒に感じられる下地処理ですが、ここにかける情熱と時間が、最終的な部屋の満足度を左右する決定的な要因となるのです。