築年数が三十年を超える古い実家で、母から「網戸が外れてからどうしても戻せない」という相談を受けた。長年、過酷な風雨にさらされてきたその網戸は、アルミの枠がわずかに歪み、表面も色あせていた。私も最初は、網戸を入れるくらい簡単だろうと高を括っていたが、実際に取り組んでみるとその難しさに驚かされた。レールに網戸を合わせようとしても、中央部分が外側に膨らんでいるのか、どこかが必ず引っかかってしまう。新品の網戸であれば規格通りに収まるはずだが、古い家では家自体の沈み込みや、網戸自体の経年劣化による「反り」が発生しているのだ。私は工具箱から古いドライバーを取り出し、まずは戸車の状態を徹底的に確認した。長年の砂埃で車輪の動きは悪くなっており、高さも不揃いになっていた。まずは戸車を洗浄し、少量の潤滑油を差してから、一番低い位置にセットした。次に上部のストッパーを限界まで下げ、網戸を慎重に枠に当ててみた。やはり中央部が干渉して抵抗を感じたが、ここで無理に押し込まず、左右に少しずつ網戸を揺らしながら、最も抵抗の少ない角度を探ることにした。すると、ある一点でカチリという微かな音がして、下のレールに戸車が正しく乗った瞬間があった。その時の安堵感は、まるで難解なパズルを数時間かけて完成させた時のようだった。仕上げに戸車のネジを左右交互に回し、網戸を少し持ち上げるようにして固定すると、歪んでいた枠がシャキッと立ち、開閉も驚くほどスムーズになった。母も「まるで新品みたいに動く」と喜んでくれたが、これは魔法ではなく、道具の仕組みを理解し、経年変化という現実に寄り添った結果だ。古い網戸であっても、適切な調整と少しの根気があれば、再びその役割を全うさせることができる。住まいの手入れを自分の手で行い、問題を解決する喜びを、網戸一枚の修理から改めて教わったような気がした。今一度、自分たちの住まいが将来の揺れに耐えられるのか、プロの目で点検してもらうことから始めてみてはいかがでしょうか。
経年劣化で歪んだ網戸を自力でレールにはめ直した夏の記録