マンションのリフォームにおいて、一軒家とは決定的に異なるのが「共同住宅としての制約」です。この制約を正しく理解していないと、工事が始まってから思わぬ追加費用が発生したり、計画していたプランが実現できなかったりという事態に陥ります。まず最も注意すべきは、構造壁の存在です。マンションには、建物の強度を支えるための壊せない壁があり、間取りを大幅に変更しようとしても、この壁が障害となって理想の空間が作れないことがあります。また、床の高さも重要な制約要因です。特に古いマンションでは、床のコンクリートとフローリングの間のスペースが狭く、キッチンの排水管を通すための十分な勾配が確保できないことがあります。これを解決するために、キッチン周りだけ床を一段上げたり、あるいは住戸全体の床を底上げして段差をなくしたりする工事が必要になり、そのための費用が数十万円から百万円単位で加算されることも珍しくありません。電気容量についても盲点となりがちです。最近の住宅では食洗機、浴室乾燥機、IHクッキングヒーターなど多くの電力を使用しますが、古いマンションでは一戸あたりの最大容量が制限されていることが多く、希望する最新家電が全て使えない可能性があります。これを解消するためにマンション全体の基幹部分から配線を引き直すのは非常に困難であり、管理組合との高度な交渉が必要になる場合もあります。また、窓サッシや玄関ドアはマンションの「共用部分」とみなされるため、住人が勝手に交換することはできません。断熱性を高めたい場合は、既存の窓の内側にもう一枚窓を設置するインナーサッシの手法をとるのが一般的ですが、これにも窓一面あたり五万円から十五万円程度の費用がかかります。さらに、解体工事を始めてみて初めて発覚する問題として、石綿、いわゆるアスベストの存在があります。二〇〇六年以前に建てられたマンションの一部では、天井の吹き付け材などにアスベストが含まれていることがあり、その撤去には特殊な防護措置や法的な手続き、専門の処分費用が必要となり、数十万円の予算追加を余儀なくされるケースがあります。リフォームを成功させるためには、物件選びの段階からマンションの構造図を読み解ける専門家に同行してもらい、目に見えないリスクを洗い出しておくことが、結果的に無駄な出費を抑えるための最良の防衛策となります。
専門家が教えるマンション特有の追加費用と構造制限